マイ・ディア・タイガー


虎頭先輩は、多分学校で一番有名だ。

先輩とお近づきになりたい人はいっぱいいる。

後輩にもそれは多くて、私はよく周りの子に「虎頭先輩ってどんな人?」と聞かれる。

格好いい3年生の集団の中で、虎頭先輩の名前はいつも絶対出る。



そんな先輩と同じ部活で、話したり一緒に帰ったり。虎頭先輩から話し掛けられなければ私からは絶対に話しかける事はできないし、サッカー部に入らないで虎頭先輩と関わらなければ、絶対に存在を認識すらされなかった。



虎頭先輩が格好いい事は知ってる。

でも、それだけじゃない事も知ってる。


こんな私の事をちゃんと面倒見てくれて、分け隔てなく接してくれて。

こうやって心配してくれて、わざわざ家まで送ってくれて。


分かりにくいけれど、優しい人なんだよなあ。



その日は緊張してほとんど何も話せず、虎頭先輩もただ無言で私を家まで送ってくれた。



「先輩、あの、わざわざ家までありがとうございました。受験生なのに貴重な時間をすみません…」


申し訳なくて深々と頭を下げると、先輩は私の頭を思いっきり鷲掴んだ。


「え!?な、何ですか」

「明日の朝は送ってもらえんの?」

「は、はい。朝は母がいるので…」

「ふーん」


ボサボサになった頭を手櫛で整える。

一方で先輩は私の返事に何を言うわけでもなく、「じゃー帰るわ」と言ってた自転車に乗って帰っていった。


じゅ、寿命が10年縮んだ気がする…。

ようやく息を深く吸えるようになった気がして、私は大きく息を吐いた。


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