Shooting☆Star

応接室を兼ねた小さなキッチン付きの事務所から、奥へと続く廊下を眺める。事務所の隣はいくつかのシャワー室を兼ねた更衣室、向かいに録音用の小さなスタジオ、その隣には衣裳の詰まった倉庫、その先にダンスの練習をする為のレッスン室。

15年前に百香がこの会社に入った時、事業拡大で今の本社が出来た。それから2年程はこの事務所のスタジオも、そのまま利用されていた。
当時デビュー5周年のS☆Sは超売れっ子で、毎日は昼も夜もなく忙しかった。
徐々に本社にスタジオの機能はうつしていったが、新しいスタジオよりも“事務所”の方が落ち着くという理由で、S☆Sだけがここに残り、気付けばS☆S専用の事務所として使うことになったのだ。

ここにいる間、彼らはいつも少年のようで、ふざけあったり些細な喧嘩やイタズラを繰り返す。
デビュー当時は10代だった彼らも、そろそろ四十路に片足を突っ込んでいる。

ずっとレッスンしててくれればいいのに。
百香は、ふと、そんなことを思ってしまう。
レッスン室から廊下を伝って、彼らの笑い声が聞こえてくる。
きっとまた祐樹がダイチにイタズラでもしているんだろう。
祐樹とダイチは、他のメンバーからも一際目立って仲が良い。
これから始まるコンサートツアーに向けてレッスンも力の入ったものになっている。
今は余計なことを考えて欲しくないのにな。
そう思って、百香はこっそり溜息をついた。


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