Shooting☆Star

☆7話☆

関係者用の駐車場に会社の車を停めて、トランクから荷物を引っ張り出す。
百香は大きなカゴに詰めた荷物を抱えて、車から降りた祐樹と拓巳と一緒にホールの通用口へと向かう。
イベント時の関係者入り口での待ち伏せは禁止されているのだが、一部のファンは聞く耳を持たない。
今日も少なくない人数の女の子達が、いくつかのグループになって“溜まって”いた。
「あ。年少組きたよ!!」
ひとりが声をあげると、彼女達が一斉に振り返る。
「相手にしないでいいから。さっさと中に入ってね。」
百香が二人に告げると、拓巳は「わかってるよ。」と、不満そうに声を上げた。
「なにアレ、感じ悪い。」
女の子達が百香を睨む。
百香は気にも止めない様子で、隣を歩く拓巳に、他に聞こえないように小声で話しかける。
「拓巳、ユウくんをお願い。」
「任せて!」と笑って、珍しいな、と拓巳は思う。モモちゃんが僕を頼るなんて。
百香は表情にこそ出さないとはいえ、不安そうなのが拓巳にはわかる。
それもそうだろう。百香と祐樹が週刊誌に取り上げられて、まだ一週間だ。
そういう時は、いつもはファンサービス多めな拓巳でさえ、ファンとの接触は緊張する。

ダイチからは、弘也と一緒に既に楽屋に着いていると連絡があった。
彼女達の言葉を借りるなら、年長組の二人。
秀と圭太は本間さんが迎えに行っている筈だ。
真ん中ってなんだろう?年少組と年長組の間は、やっぱり年中組なのだろうか……?
幼稚園みたいだな。
30と5歳。30と6歳。30と7歳が、ふたり。30と8歳。30と9歳。
それだと幼稚園じゃなくて小学校だな……。
百香は、くだらないと思いながら、そんなことを考える。
ぎゃあぎゃあ騒ぐファンに詰め寄られ、後ろを振り返る。
視界の隅でひとりの女の子が集団から少し離れて、しゃがみ込むのが見えた。
百香の横を歩く祐樹に別の少女が詰め寄る。
「祐樹くん!あれ、嘘だよね!?アタシあんなの信じないよ!」
一際大きな声で叫ぶようにして祐樹に手を伸ばした少女の前を、遮るように拓巳が割り込む。
「二人とも!中に入って!早く!!」
百香は通用口に駆け寄ると、いつものように祐樹と拓巳を促す。
[部外者立ち入り禁止]と張り紙されたドアを開けると急いで通路に並ぶテーブルに荷物を置き、守衛室を兼ねた受け付け窓口のスタッフに「裏の警備増やして。あと、救護の人、来てる?先生じゃなくてもいいから呼んで。外にいるから。」と声を掛ける。
「どうしたの?」
後から入ってきた祐樹が通りすぎようとして、不思議そうに振り返る。
百香はその質問には答えずに、
「ユウくんと拓巳は、先に楽屋行ってて。あ、どっちか、その荷物お願い。」
と言って、自分の鞄だけ持ち、再び通用口のドアに手を掛けた。
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