Shooting☆Star

☆12話☆

昨晩の事務所での騒動に関して「言い訳を聞いてあげるわ」と、社長に呼び出されたダイチと祐樹は、午前中いっぱいの時間を使って、こってりと叱られていた。
二人並んで床に正座するその後ろ姿は、子供みたいだと、思う。
部屋の隅で控えていた百香は、そんな二人の姿を後ろから眺めながら考える。
昨日、二人きりで何を話したのかは知らないが今日のダイチと祐樹はいつも通りだ。
祐樹は右手に怪我をして包帯を巻いている。
昨晩、事務所から出てきた祐樹の、あまりにも腫れた右手に百香は困惑した。
祐樹もダイチも、怪我の理由は教えてはくれなかったが、嫌がる祐樹を無理矢理病院に連れて行き、腫れた手を診てもらったところ、固定具と包帯でぐるぐる巻きにされ、しばらくの間は指を動かさないようにと念を押された。
仕事の合間に、祐樹の食事の世話もしないといけないのか……。
後でスケジュールをチェックして、予定の調整と、ケータリングには片手で食べられるものを用意してもらわないと。
ハウスキーパーも頼んだ方がいいだろうか?
時間が取れるようなら、私がやる方がいいかな……?
包帯が外れるまで、祐樹に付きっきりになりそうだな。
本間さんの負担も増えるだろうけど、これは仕方ない。
本人達は言わないが、怪我の理由は多分、私だ。
祐樹に甘えてしまった分、治るまでは支えよう。
……そう思って百香は、祐樹からダイチへと視線を移す。
結局、百香はダイチを許していない。
ダイチのことは好きだが、謝られたところで、よりを戻す気にもなれなかった。
最初から伝わってなかったな、そう思う。
付き合っていても、ずっと片思いだった。
スタートから少しだけずれていた互いの認識は、噛み合うことなく少しづづずれて遠く離れていった。
悲しいけど、それだけだ。
昨晩、事務所からの帰り道、公園で祐樹に呼び止められなかったら、私はひとりでどうしていたのだろうか……。
想像出来ないな。今まで、こういう時ってどうしていたのか、全く思い出せない。
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