Shooting☆Star

☆2話☆

誰もいなくなったレッスン室のカーテンを閉め、鍵を掛ける。
シャワー室のドアを開け、灯りを消し換気扇だけの稼働にする。
デスクに戻った百香は、溜まった書類を項目ごとに分けて封筒に詰め込む。
明日からS☆Sの春のコンサートツアーが始まる。
しばらく東京公演が続くとはいえ、よっぽどのことが無い限り、デスクワークの時間は取れないだろう。
積み重なると面倒なことは、今夜中に片付けておきたかった。
愛用のマグに使い捨てのドリップパックを引っ掛けてコーヒーを淹れる。
ラジオをつけると、ちょうど先週収録した放送が始まるところだった。
「さて、東京は夜9時になりました。皆さんこんばんは。流れ星の降る木曜夜、シューティング☆スターが全てのマイメンに送るこの番組。お相手は、」「ダイチです」「拓巳です」「圭太です」「秀です」「弘也です」「そして、本日の進行は、オレ。祐樹がお送りいたします!」
百香はラジオのボリュームを聴こえるギリギリまで小さくして、作業再開する。
1時間で終わらせて、帰ろう。
そう思ってパソコンの前に座る。しばらく経って、ラジオのトークは誰が振ったのか、ダイチのスキャンダルについての話題になっていた。

「そういえば、ダイチのアレは何だったの?」
「あー。僕も訊きたい!」
「何、ってなんでもないよ?」
「ダイチ、撮られるの何度目よ?」
「デビュー当時は未成年だったからそういうの無かったけど。ここ10年くらい?ダイチは結構やられてるよね。」
「あー。もう、ほんとどうでもよくない?他人の恋愛とかさ。俺らもうアラフォーだよ?」
「アラサーとかアラフォーとかの前にボク達アイドルでしょ。」
「ぼくも恋愛したいですね…。」
「弘也は奥さんいるじゃん。」
「ヒロがありなのに、何で俺は駄目なんだよ!」
「いやいや、ぼくも撮られましたからね。」
「そういえば、祐樹は無いよね。そういうの。」
「えっ、オレ?」
「飲みとか行っても、女の子と喋らないよね。」
「ユウは女の子の扱い、わかんないタイプだから。」
「えっ、圭太にはオレがそういう風に見えてるわけ?」
「えっ?じゃあ、あるの?そういう話。」
「無いけど!」
「好きな人いたことあるの?」
「あるよ!?流石に。え、オレに好きな人がいちゃダメなん!?」
祐樹のヤケな返答に、スタジオが笑いに包まれる。祐樹はそのまま無理やりに進行を進めてリクエスト曲をかけた。
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