Shooting☆Star
百香なら、きっと助けようとするだろう。
多分、百香は、守るべき立場の人間が目の前でそれを切り捨てようとしたのが許せなかったのだ。その相手が例え自分の会社の社長だとしても。
ダイチのグラスを受け取って、マスターは次のボトルを選びながら、そうですねぇ……と考える顔をする。
「ワタクシの知る百香さんは、愛の深い方です。自分の周りに愛情を注ぐことばかりを考えて、時々自分を犠牲にしてしまう。そういうタイプの女性です。 助けを求められたら、手を差し出してしまう。」
そう言ってニヤリと笑うマスターは、ダイチの前にそっとグラスを置く。グラスに注がれたウイスキーのボトルのラベルを見えるようにカウンターに置いて、弘也に視線を向ける。
「でも、それは、百香さんが大切に思う相手に対してだけです。きっと、百香さんは弘也さんのことを、放っておけなかったのではないでしょうか。百香さんにとって、あなた方は家族のようなものですからね。」
そのまま、氷の減った祐樹のグラスを取り上げ、目線だけで祐樹のボトルを確認すると、グラスを替えて氷を入れる。
「先程のお話に戻りますが……良いんじゃないでしょうか?指輪に仕込んだ愛の石。“永遠の幸福”という言葉は、百香さんにピッタリかと。」
マスターの言葉に「ほらぁー!言ったでしょー。」と拓巳が祐樹の肩を叩く。
「モモちゃんの誕生日プレゼント、やっぱりペアリングがいいよ。」
マスターからグラスを受け取って、祐樹は自分のボトルのキャップを開け、中身を注ぐ。
「いや、今からじゃどう考えても間に合わないだろ……」
「オーダーじゃなかったら、いくらでもあるでしょ。」
「えー。それじゃ意味ないだろ。」
勝手に盛り上がる拓巳達を眺めて、祐樹は「もう、いいよ」と呟く。
「なんか、もっと普通のプレゼントで。」
「なんで?すればいいのに。プロポーズ。」
拗ねたみたいに言う拓巳に、祐樹は困惑する。
「いや、だって、モモだって困るでしょ、それ。」
「なんでモモちゃんが困るんだよ……そこは喜ぶところじゃないの?」
いや、困るだろう、多分。だって、ほんとは付き合ってないし。
百香は今月に入って、ダイチと別れたばかりだし…なんて、流石に言えるわけもない。
あれからもダイチは平然としているように見えた。少なくとも、自分達の前では何事もなかったかのように振る舞う。
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