Shooting☆Star
祐樹は黙ってグラスに口を付け、答える代わりに溜め息をついた。
ダイチは祐樹の横顔を眺めて、苦笑する。
「まあ、百香は困りそうだよな……。あいつ、仕事好き過ぎるし。」
「いいじゃん、今更。みんな知ってるんだから。…大体、3年も掛けて何モタモタしてるのさ。3年ってね、そういう次期だよ!」
食い下がる拓巳に、「拓巳、その辺にしときなよ。」弘也はそう言って「みんな自分のペースってものがあるんだから。」と続ける。
「それより、拓巳は何あげるの?モモの誕生日プレゼント。」
「僕は今年もケーキの用意してるよ。結構力作。まあ、実際に作るのはお店の人だけど。」
「ダイチは?」
「事務所用のマグカップ。こないだ割っちゃってからずっと来客用使ってるし。」
「なんだ、もうみんな用意してるんだ。」
「いや、だって、今週だよ?ヒロくんは?」
「まだだよ。ダイチがカップなら、ぼくは珈琲にしようかな。最近、見つけた豆屋さん、結構美味しいんだよ。」
「あー、それは喜びそうだな。」
祐樹はグラスを見つめて、オレはどうしようかな……と、呟く。
「そうだ、モッさんに頼んでさ、収録の後に楽屋でパーティーしようよ。」
サプライズが好きな拓巳はワクワクした顔で提案する。
「いつも同じじゃつまんないし、まさかモモちゃんも、そのタイミングだとは思わないでしょ?」
「え、普通に飲み会でいいじゃん?」
めんどくさそうに言うダイチに、「ダイチ、ダイチはそういうとこ!」そう言って、拓巳は笑う。
「祐樹はプレゼントとかいいから、プロポーズしちゃいなよ!いい加減、腹を括れ!」
何がそんなに楽しいのか、拓巳は笑いながら、祐樹に絡み始めた。

メッセージの受信を知らせる音がして、スマートフォンを確認すると、圭太からだった。
《まだ、飲んでる?モモちゃんと秀が「明日もあるんだから、早めに解散しなよ」って伝えろって》
すぐに返事を打ちながら、弘也は、幸せだな、と思う。
仕事は毎日楽しいし、家に帰れば茉莉子と子供達が待っている。
全部、百香がいたからある今だ。
自分は百香に、少しでも借りを返せているだろうか?
願わくば百香が、他人の幸福ばかりじゃなくて、自分の幸せを見つけられるといい。
きっと、百香なら大丈夫だ。
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