Beast Love
しかし、どの飲食店も人でいっぱいだった。


入り口には長蛇の列ができており、諦めざるを得なかった。

「わぁ……。凄い人だね」

歩き回って疲弊した脳では、そんな単調なフレーズと共に小さな溜息がポロリ。

「店に入るのは諦めるか。売店でなんか買って適当に食おーぜ? 先にそこのベンチに座ってろよ。すぐ戻る」


お店に入るのは無理だと諦めた途端に、どこかにある売店に向かって、人混みの中をスタスタと歩き始めるマサト。

「あ、ちょ、待って!」


すかさず反応するも、あっという間に行き交う人々の中に消えてしまった。

「えぇ〜……はぐれちゃった。どうしよう、連絡先なんて知らないのに……」



って言うか、勝手にひとりで行かないでよ!


「そこのベンチに座ってろって言ってたけど〜……あ、あのベンチか」

向かいの隅に木製のガーデンベンチを見つけた私は、人の流れを避けながら、ベンチに腰掛ける。

「本当に戻ってくるのかな。このまま置き去りにされたらどうしよう」


正直、その可能性も有り得なくも無いから、困る。
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