Liebe


鈴の音がしたのは、その時だった。

小さな音のようだったが、その音ははっきりとエリーの耳に響いていた。
思わず足を止めて辺りを見回す。

今の鈴の音は一体何なのだろう。
音の出どころを探していると、エリーの瞳が一ヵ所で止まった。

そこには、真っ白な毛並みの猫がいた。
首に鈴がついている。間違いない、あの猫の音だ。

エリーは思わずその猫を追いかけた。
同じように立ち止まっていた猫はそんなエリーに見向きもせず歩いていく。

少しくらい寄り道しても大丈夫だ、とエリーはその猫を追いかけることにした。

猫の速さはそれほど早くない。
完全に追いつくこともできないが、姿を見失うこともない。

何となくリヒトと出会った時のことを思い出しながら、エリーは足を止めずについていく。

どことなく楽しい気持ちで猫についていっていたが、ふとエリーは足を止めてしまった。


――静か過ぎる。

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