Liebe

午後になると、動物たちがそわそわしだした。
それを不思議そうに見ていると、今度はお茶会を楽しんでいた人間たちも立ち上がり始める。

程なくして、街に聞き覚えのある声が響き渡った。


『まもなく、音楽の時間です。パートナーと共に街の中央にお集まりください』


この穏やかな声は、シャールのものだ。
それを聞きながらぼーっとしていると、別のテーブルで食事をしていたはずのダニエルがやってきた。
いつもと変わらない笑顔だ。

「アンナ」

「あら、ダニー。遅いわよ」

「それはそれは、失礼致しました。……僕と踊っていただけますか?」

「ふふ、どうしようかしら」

「……アンナ」

「冗談よ。踊りましょう」

そう言ってアンナとダニエルはテーブルの傍を離れていく。

それを見つめていると、今度はシェルが現れた。
全身から発熱しているかのように顔から首まで、そして手も赤くなっている。

「……サ、サラ」

「……シェル」

「あー、っと、その、オレと、踊ってくだ、さい」

「……」

「……」

「……はい」

「……っ! っしゃ!」

二人もまた、テーブルの傍を離れていく。
エリーはなんだか嬉しそうな表情だ。

ふとテーブルの上に視線を移すと、リヒトが身だしなみを整えている。
それを眺めていると、リヒトはエリーを真っ直ぐに見つめた。

そして優雅な仕草でお辞儀をしたかと思えば、今度は小さな手をエリーに差し出した。
エリーはにっこり笑って、テーブルの上に手を伸ばそうとした。
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