恋は、秘密主義につき。
言われて、あらためて思い返してみた。

仕事が忙しいと聞けば、疲れや体調はもちろん心配になります。
土日も出勤だと聞けば、自分はお休みで好きなように過ごしているのに、今ごろ頑張ってるのかなって。心の中で応援してみたり。

だからと言って次はいつ会えるのかと待ち望んだり、声が聴きたくていきなり電話してみたり、・・・したことはありません。
その日あったことを日記みたいに、私からラインを送ることはあっても、征士君のように、『レイちゃんの顔が見たい』『早く会いたい』と、赤裸々な告白をしたこともありません。

会って、彼と一緒にいるのは居心地がいいし、次の約束をくれるのも嬉しく思う。好きだと言われるたび、征士君の真摯さに惹かれてもいく。

惹かれていくけれど。

「許婚クンにもっと近づきたいって、美玲から思ったコトある? 向こうから来るから考えたことない?」

一実ちゃんの畳みかけるような言葉に、ドキッとした。 
心臓が変にざわついて。落ち着かない。

「自分でも少しは分かってるんじゃない? 許婚クンには思わないことを、佐瀬さんには思ってるって。それはどうしてなのか、ちゃんと考えてみて、美玲。じゃないと間違えたまま、大事なモノを失くしちゃうよ?」

男の子口調できっぱりと言い、一実ちゃんは茶化すことなく、じっと私の目を見つめたのでした。
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