恋は、秘密主義につき。
それから。
夕陽に彩られた家までの短い道のりを、変わらない黒いシャツ姿の佐瀬さんの横に並んでゆっくり歩きました。
わざと遅れがちになる私に歩幅を合わせるのが少し、億劫そうな彼。

想いが通じた喜びと。選んだものの重みを噛みしめながら。自分を奮い立たせるように、一歩また一歩。

踏み出してしまった以上。もう後戻りは出来ないから。
自分が出来ること。
佐瀬さんの為に出来ること。
海の魚と川の魚でも。一緒にいられる方法を探すこと。

もしかしたら誰も味方になってくれる人がいなくても。独りでも。
最後まで諦めたくないんです。
貴方を。



「・・・どーした?」

家がもう目の前に近付いて。不意に佐瀬さんが立ち止まり、気怠そうに私を振り返った。

「ずっと黙ったまンまだな」
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