恋は、秘密主義につき。
辺りが薄暗くなりかけの頃。必要な食材を買うために、駐車場も広い大きめのスーパーに寄り道をして。
ただでさえ、土曜の夕方で家族連れも多い時間帯。はぐれると思っているのか、やっぱり片手は繋いだままカートを押して歩く征士君。
野菜売り場でバラ売りのキュウリを手に取り、少しでも新鮮そうなものを選んでいると。

「いいな、そういうの。奥さんみたいで」

不意の笑顔が矢になって、心臓にのめり込んだ。









相変わらずきちんと片付けられた彼の部屋は、前に来た時と変わりなかった。

「これ、レイちゃんの」

手渡された赤いエプロンは、前結びで丈は短めのシンプルなデザインのもの。
このあいだ言ってくれたことは私も憶えていました。

「・・・ありがとうございます」

のめり込んだ2本目の矢。


淡く微笑み返して少しだけ。躰が震えそうになった。
苦しいのか、痛いのか、怖いのか。

だけど。心も躰も、もう佐瀬さんから離れない。
目の前の征士君を置き去りにして。


残酷なくらいに。


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