恋は、秘密主義につき。
「レイちゃんに頼みがあるんだけど」

「はい」

企み風ではなく、どちらかと言えば思案顔。
私も小首を傾げて言葉の先を待つ。

「会社で顔を会わせるだろ。その時になんでもいいから気が付いたことを、俺に教えて」

・・・えぇと。つまり?

「ネクタイの色が合ってなかったとか、眉間にしわが寄ってたとか、レイちゃんが見たままでいいよ。ラインでいいから、できれば毎日」

その理由も、とても彼らしく。

「俺もレイちゃんも、鳴宮征士って人間を再認識できるだろ? それで納得できることがお互いに見えてくるかもしれないし、少なくとも俺にとって無駄にはならないから」

清々しく言い切られて。
思考回路を巡らせたあと、「わかりました」と微笑んで返した。

「でも、なかった時は無いって正直にいいますね」

「採点は厳しめで頼むな」

冗談めかした口調で伝わってきた本気。


『好きだ』
『俺を見て』

征士君は一歩も退くことなく。私への想いを真っ直ぐにかざしていました。
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