恋は、秘密主義につき。
10-4
部屋を出てロビーまで戻ってきた私達は、そこで愁兄さまともお別れすることになりました。

「じゃあ美玲。近いうちに佐瀬と三人で、これからの話をしないといけないね」

ふわりと薫るような微笑みを浮かべて私の頬を撫で、キスを落とす兄さま。

「義博さんと優美さんには時期が来たら、僕から話すから。それまではもう少し、内緒にしておきなさい」

「はい。・・・あの、兄さま」

「どうしたの?」

「お祖父さまを説得してくれて、ありがとうございます。私と佐瀬さんを招待したのも、誕生パーティの今日なら必ず、お祖父さまが私に会いたがるって分かっていたからでしょう・・・?」

どうあれ昨日の今日で簡単に済む話じゃありません。
兄さまが前もって、お祖父さまにきちんと筋の通る口添えをしてくれなければ到底、婚約を破談にしてまで佐瀬さんを受け容れるなんて。
思えば。彼が兄さまと一緒にお祖父さまの仕事を手伝うという提案は、どこか駆け引きのようなものだった気もしています。

「僕は大したことはしていないよ。要はタイミングと、あとは美玲と佐瀬の運命次第だって思っていたからね」

兄さまがクスリと笑みを零す。

「こんなところで(つまづ)くくらいなら、それまでってことだったかな。佐瀬は昔から悪運の強い男だから、心配はしていなかったけどね僕は」

「あー・・・悪魔に取り憑かれてるオカゲだろ」

「そんなに御利益のある悪魔なら、ぜひ僕にも紹介してくれないかな」

「・・・・・・・・・鏡でテメーの(ツラ)をよーく見てみろ」

???
兄さまと佐瀬さんの会話が、ちょっとよく分かりませんでしたけれど。
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