恋は、秘密主義につき。
『もうすぐ美玲の誕生日だね。双葉もいることだし、今年は賑やかになるかな』

また連絡するよ、と愁兄さまは最後にとびきり優しい微笑みを浮かべ、私達3人を見送ってくれました。



ホテルを出発して山間を縫うように走った車はやがて高速道路に乗り、暮れはじめの景色をどんどんと追い越していく。
なんだか気持ちも緩んだのか、いつの間にか後部シートでふーちゃんの肩にもたれ、眠ってしまった私。

車の震動をゆりかご代わりに心地よく感じながら、ふと意識が醒めかかって。
瞼が持ち上がらないまま、ふーちゃんが低い声で話しているのがぼんやりと聴こえた。

「・・・アンタとジジィにどんな因縁があったか知らないけどさ、ミレイにはそんなの関係ないんだからね」

ああ・・・またふーちゃんが佐瀬さんに・・・?

「何があってもミレイを不安がらせるな。それが出来ないなら、いつでも奪い返す。どこにいたってミレイのことなら、手に取るように分かるからね、ぼくは」

いつもの険のある言い方とは違う、どこか大人びた声音。
そのまま目を瞑り、眠ったふりで耳をそばだてる。
< 340 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop