恋は、秘密主義につき。
理屈じゃなくて、勝手に心が動くもの。その定義は分かる気がする。

圭太さんとお付き合いしていた時はどちらかと言えば、与えられることが純粋に嬉しくて浮き立っていたような。
大人で、何もかもがスマートで。積極的にリードされて、どんどん絡め取られていって。
心が動いたと言うより。流れに身を任せていたのかも知れない。それでも確かに彼を好きだったし、恋と呼べるものだったと今でも思える。

それなら。一実ちゃんが言う『本物』の恋を、私はまだ何も知らないってことなんでしょうか。
切り分けた一口サイズのハンバーグを口に運んで、考え込んだ。

「恋って難しいんですねぇ・・・・・・」

「そうやって考えてる時点で、すでに恋じゃないけど?」

「・・・・・・・・・深すぎて、分かりません~っ」

ガックリ項垂れる私に、一実ちゃんは。

「大丈夫、気が付いたら落ちちゃってるから。恋ってそういうものなの!」

片目を瞑って、可愛らしく笑った。



愁兄さまは教えてくれるでしょうか。
落ちちゃった時には、まずどうすればいいのかを。





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