恋は、秘密主義につき。
それを見抜かれたように黙って躰を抱き寄せられ。顔色ひとつ変わらない様子でしたけど、佐瀬さんから匂い立つお酒の香りがこんなに強いのも、そう言えば初めてかもしれません。

しっとりと湿った唇が重なり、絡みつく深さを増していく。
いつもよりどこか。強かなのに甘く追い詰められる。・・・そんなキス。
弱い舌先を遊ばれて声をくぐもらせると、愉しんでいるみたいにもっと。

頭の芯が痺れて白く溶かされる。
熔けて、どんどん躰から力が抜けていくのを。佐瀬さんが腕でしっかり抱き込み、それでも離してはくれない。

そのままソファに沈められると思っていたのに、存分に口の中を侵し尽くしてようやく私を解放する。

「・・・まだ、へばるなよ?」

不敵な気配に、胸元に預けていた顔をゆるゆると上げれば、目を細めた貴方が妖しく口角を上げて見せた。

「せっかくの保科のお膳立てだ。じっくり抱き潰してやる」

「・・・お手柔らかにお願いします」

「聞けねぇな」

困り笑いと、人の悪そうな笑み。

軽くまた口づけを交わしてから、私の髪を梳くように撫でながら佐瀬さんが言いました。

「言っとくが・・・、あン中にオレのはねぇぞ」

追った目線の先には、ダイニングテーブル。並んだプレゼントを指したのだと察する。
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