恋は、秘密主義につき。
もう10分ほど走った辺りで。兄さまは車を立体駐車場に乗り入れ、そこから二人で歩く。
見知らない駅から真っ直ぐに伸びた、大きなイチョウの並木道は。車道を挟んで両側に色々なお店が並んでいた。
パン屋さんだったり美容室だったり、お団子屋さんにお蕎麦屋さん。
受け継がれてきたものと新しいものが上手に手を取り合って、それが魅力なのか、有名な街ではないのに行き交う人も多くて活気に満ちています。

「兄さま。よく来るんですか、ここ」

物珍しそうにあちこち見渡している私の手を引きながら、愁兄さまはクスリと笑う。

「前に仕事でかな。いつか美玲を連れて来てあげたかったんだよ。気に入るだろうと思ったから」

破顔一笑。相変わらず優しくて、幸せで胸やけがしそうです。

「今日はこの近くで、人と待ち合わせをしていてね」

不意に兄さまが言った。

「? どなたとですか?」

「ちゃんと美玲にも紹介するよ」

視線を傾げる私に、柔らかく微笑んでくれたけれど。
その先は内緒のまま。




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