恋は、秘密主義につき。
私は私で、クリームチーズがぎゅうっと濃縮され、焼き加減が絶妙なチーズケーキに、舌を蕩けさせながらやり取りを聴いていて。

普段は穏やかで優しい話し方の兄さまでも、同級生が相手だと昔に還るんでしょうか。新鮮な一面を見た気がします。


「それで美玲、佐瀬のことだけど」

一切れ一切れを惜しむように口の中で味わっていたら、いきなりこっちに話が振られて。思わず飲み込む。

「〇※△ッ、・・・はいっ?」

慌てて取り繕った笑顔。
愁兄さまが、顔を振り向けて微笑んでいる。

「彼は最近、勤めていた会社が解散して失業中らしくてね」

それはとてもお気の毒な・・・。34、5歳で転職ともなると、なかなか厳しいご時世でしょうし。前職にもよると思いますけど、たぁ君に相談してどこか紹介してもらいましょうか??

思い付いた提案を口にしかけて、兄さまがやんわりその先を続けた。

「ちょうど良いから、美玲のボディーガードとして僕が雇おうと思う。期限は、・・・そうだね。鳴宮君との今後も含めて、美玲が僕の手から離れるまで、かな」


・・・・・・ワンモア・プリーズ。兄さま、今なんて言ったんでしょう?
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