恋は、秘密主義につき。
自分を曲げずに、思ったようにするのがふーちゃんなので。強引に思える時もあるけれど、私を心から好きでいてくれてるのを、ずっと知っていますから。
何を言われても、ぜんぶ愛情に感じてしまうのです。これからもきっと。




「ミレイ、また来るからねっ」

ヒサ君の家に向かう路線の改札口の端で。遠慮なく私を抱き締め、別れを惜しんでくれるふーちゃん。

「いい? ちょっと見かけが良いからって、簡単に鳴宮征士に気を赦しちゃダメだよ? ぼくがダメって言ったら、ダメなんだからね」

耳元で低く囁かれる。 

「・・・ミレイには、自分で好きになったヤツと、死ぬほど幸せになって欲しいだけ。許嫁なんて大人の勝手な都合なんだから、素直に聞くことない」

私を離して見下ろしたふーちゃんの顔はとても真剣で。伝わってきた気持ちに、胸の奥がきゅっと切なくなりました。

「心配してくれてありがとう、ふーちゃん・・・。征士君のことは、ちゃんと考えて答えを出すつもりですから、大丈夫ですよ!」

わざと明るく笑って返せば。

「お人好しのミレイが、なに言っちゃってんだか・・・」

失礼なくらい、深い深い溜め息を吐かれています。

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