そのままの君が好き〜その恋の行方〜
「和樹さん、あなたのお気持ち、とても嬉しいです。だけど・・・本当にいいんですか?『2人』で。」


「加奈・・・。」


その私の言葉に、驚いたように私を見る和樹さん。


「絵里ちゃんは・・・どうするんですか?」


そう問う私に


「絵里は絶対に渡さないつもりだった。だけど・・・悔しいけど、現実問題として、裁判とかになっても、絵里の年齢から見て、結局親権はあっちに行ってしまう可能性が高いらしい。それに、俺にとっては、許し難い女でも、絵里にとっては大好きな、たった1人の母親。俺の感情だけで、絵里から母親を奪うわけにもいかない。だから・・・本当に不本意だけど、アイツに託すことにする。俺はもちろん、父親として、これからも出来る限りのことはするつもりだけど・・・少し離れた場所から、絵里を見守って行くことにする。」


と言った和樹さんの表情は、本当に無念そうだった。その表情を、私は少し見つめていたけど、意を決して口を開いた。


「覚えてますか?奥さんが帰って来た次の日に会った時、私聞きましたよね?『絵里ちゃんはどうしてますか』って。」


「うん、覚えてる。」


「そしたら、奥さんにベッタリだって、和樹さんは答えて。やっぱりな、ってその時思いました。その前の日も、奥さんの顔を見た途端、私から離れて、夢中で奥さんに駆け寄って・・・もう私のことなんか、見向きもしてくれなかった。それまでは、絵里ちゃんのママになれる自信、結構あったんですよ。だけど、そんなの一瞬にして吹っ飛んじゃって・・・そりゃそうだよなって、納得しちゃいました。そして、その時、悟りました。私はやっぱり絵里ちゃんのママには、なれないんだって。」


「加奈・・・。」


「そして今、あなたの言葉を聞いて、もう1つの現実も悟らされました。私には絵里ちゃんから、パパを奪うこともやっぱり出来ないって。」


「?!」


その私の言葉を聞いた和樹さんは愕然とした表情になる。
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