そのままの君が好き〜その恋の行方〜
これでまた、当面は勉強に精を出すしかないなと、落ち込んでいる私に声を掛けて来たのは、サークルの1年先輩の安達慎也(あだちしんや)さんだった。


「どうした、桜井。元気ないな、失恋でもしたのか?」


「はい。」


冗談半分で言ったのに、私にまともにそう返されて、安達さんは慌てて言った。


「マジかよ?まさかホントだとは・・・悪かったな、すまん。」


申し訳なさそうに私にそう言った安達さんは


「でも桜井、元気出せよ。誰だって1度は経験することだから、またいいこともあるさ。」


と励ましてくれるけど


「はい・・・。」


しかしあからさまに落ち込んでいる私。


「参ったなぁ・・・よし、桜井、甘いもんでも食いに行こう。」


「でも・・・。」


「気晴らしになるぞ、ご馳走してやるから。」


「・・・。」


「わかった。俺と2人っていうのを気にしてるんだな。じゃ、小関、お前も一緒に来いよ。」


近くにいた同級生の小関有紗(おぜきありさ)にも声を掛けた先輩は、私達を近くの喫茶店でやっているケーキバイキングに連れてってくれた。


食欲なんて、なかったのに、いざケーキを前にすると、やっぱり女子の血が騒ぎ、私は有紗と競うようにテーブルとケーキの置いてある皿の間を往復する。


「2人ともよく食うなぁ。まぁバイキングだから、いくら食っても構わねぇけどさ。」


と笑いながら、私達を見ていてくれる安達先輩。そんな先輩に安らぎを覚えていた。


それ以降、先輩は私を何かと気にしてくれるようになった。有紗と3人ということが多かったけど、遊びに連れてってくれることもよくあった。


そんなある日、先輩が私に声を掛けて来た。


「桜井、よかったら映画に行かねぇか?チケットあるんだけど。」


「ありがとうございます。でも今日は有紗、用事があるって、もう帰っちゃいましたよ。」


「知ってる。でも構わねぇよ、チケット2枚しかねぇから。」


「えっ?」


「俺は、桜井を誘ってるんだよ。」


そう言って、私を真っ直ぐ見る先輩。私の鼓動は思わず跳ねた。
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