そのままの君が好き〜その恋の行方〜
忘年会やクリスマスが、たけなわになる直前の
12月の頭に、クラス会は設定された。


名古屋から戻って来られなかった白鳥さんは欠席。悠も体調を崩してドタキャンになってしまったが、32名のクラスメイトの内、24名参加はかなりの参加率。担任だった山上剛造(やまがみごうぞう)先生も顔を出してくれるそうで、賑やかな会になりそうだった。


「チェーン店の居酒屋ではないけど、そんなかしこまった店でもないから、あんまり勘違いした格好で来ないように(笑)」


とのメッセージが、案内ハガキに付いていたので、まぁ普通に大学生として、恥ずかしくない格好で、私は由夏との待ち合わせ場所に着いた。


「オッケー。いい感じだよ、加奈。」


「ありがとう。」


何事にも辛口の由夏の合格が出て、私は一安心。久しぶりのクラスメイトとの再会は、もちろん楽しみだけど、今日の私には、重要なミッションがある。


会場に着くと


「よぅ、桜井。しばらく。」


と早速声を掛けてくれたのが、由夏の彼氏でもある塚原くん。


「塚原くん、久しぶり。E入団、おめでとう。」


「ありがとう。」


沖田くんと違って、大学に進んだあとも野球を続けていた塚原くんは、先のプロ野球ドラフト会議でEから3位指名を受け、入団が決まっていた。今日の会は、彼の壮行会の目的もあった。


私の祝福に、顔をほころばせた塚原くんだったけど、すぐに表情を引き締めた。

 
「由夏から聞いてる。桜井、沖田のこと、頼むな。」


「塚原くん・・・。」


「だいぶ元気になって来たけど、相当凹んでるよ、アイツ。あんなワガママ娘、お前の手には負えないから止めとけって、随分忠告したんだけどな。」


塚原くんは高校の時から、唯さんのことが、あまり好きではなかった。


「桜井なら大丈夫。今のアイツを癒やしてやれるのは、お前みたいなしっかり者で、人の心の痛みに、ちゃんと寄り添ってやることが出来る奴だよ。」


「そんなこと言ってくれても、何も出ないよ。それに私が沖田くんのお眼鏡に適う保証なんか、ないからさ。」


「わかってる。でも俺は、お前達、ピッタリだと思う。うまく行くといいな、沖田の為にも、桜井の為にも。」


そう言うと塚原くんは、笑顔を見せた。
< 28 / 177 >

この作品をシェア

pagetop