そのままの君が好き〜その恋の行方〜
その沖田くんは、まだ姿を見せてない。塚原くんから離れた私が、他の子達と話をしていると


「沖田。」


と呼ぶ声が。振り返れば、沖田くんが声を掛けた塚原くんに手を上げている。高校時代、バッテリーを組んでいた2人は、教室でも、いつも一緒だった。


(沖田くん・・・。)


その姿に、私の鼓動は跳ねる。比較対象の白鳥さんが凄すぎたのかもしれないけど、こうやって改めて見てみると、沖田くんもイケメンだ。高校時代、モテなかったのが不思議なくらい。


現に私の周りにいる女子何人かの目がハートになったのが、感じられて、私はちょっとイラッとする。


沖田くんは、塚原くんと少し話をしていたけど、私の顔を見ると、素敵な笑顔を見せて近づいて来た。


「桜井さん、ご無沙汰。」


「こちらこそ。」


私も笑顔をみせるけど、ぎこちなくなってないかな?


「厚生労働省だって?スゲェなぁ、まさしく有言実行だな。さすが、桜井さん。本当におめでとう。」


「ありがとう。」


このまま、ずっと話をしてたかったけど、沖田くんが来て、全員揃ったということで、私達は一旦席についた。


幹事の開会挨拶、山上先生による乾杯、そして各自の進路先と近況報告が終わると、あとは無礼講というかフリーになって、私達は思い思いの人と話に花を咲かせた。


山上先生に挨拶に行き、厚労省に決まったことを改めて報告すると、先生は大いに喜んでくれた。


そのあとは、由夏と一緒に、話の輪に加わったが、懐かしいクラスメイトとの会話は、もちろん楽しかったけど、なかなか最大の目的を果たすような状況にもならず、私は気が気でない。


時間は刻々と過ぎて行く。二次会という話も出ているが、電車の時間の都合もあり、私は参加が難しそうだ。焦りの色を濃くしていた私を肘で由夏がつつく。


見れば、沖田くんがトイレにでも行くのか、席を立った。横で塚原くんがサインを出すように頷いている。由夏と塚原くんは、今日はお互い知らん顔で、席も離れていたが、それは私の為だったということにようやく気がついた。


(ありがとう。)


2人に心の中で、お礼を言うと、私も席を立った。
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