そのままの君が好き〜その恋の行方〜
最近は、ジミ婚という言葉も、あるように、あまり大掛かりの披露宴と言うのは、少なくなっているそうだが、この日の招待客の数は半端ではなかった。


本人は頑なに拒否してるが、なんといっても大企業の御曹司の披露宴だ。お父さんの繋がりでやたら、いかめしい肩書のオッサンやオバサンが多数来場されたし、当然今の先輩の会社関係者も来る。


お蔭で、俺達は受付を頼まれてたから呼ばれたが、他の野球部の同期の連中や後輩、クラスメイトや先輩の大学時代の友人、更には水木さんの友人の一部が弾かれて、二次会からの参加ということになってしまった。


俺と悠の披露宴に、関係もない連中を勝手に呼んで、本当に来て欲しい連中を呼べないなんて、本末転倒だと先輩は激怒し、先輩の親父さんも、お前が会社を継ごうと継ぐまいと、俺の息子であることは間違いない。俺にも、立場というものがあるんだと、一歩も引かず、ひと悶着どころか、ご悶着くらいあったらしい。


水木さんは、先輩を宥めるに苦労したようだ。


それでも、さすがにこの日の先輩は、そんな舞台裏のゴタゴタはおくびにも出さずに、新郎として、立派に振る舞っていたし、身重の身体で大変だろうに、水木さんもいつもの悠スマイルを絶やすことなく、俺達を癒やしてくれた。


「悠はキレイだね。」


「うん、羨ましい・・・。」


桜井さんと岩武さんはこんなことを話していた。全く同感。俺達のテーブルは、他には俺達がいつまでも頭が上がらない1年先輩の白鳥さんの同期生や、その上の先輩達。


少々緊張したのも、確かだが、久しぶりに会えた先輩達といろいろな話が出来て嬉しかった。


新郎新婦への挨拶もようやく済ませ、宴もたけなわになって来た頃、俺は、トイレに立った。


用を済ませ、会場に戻る前に、ちょっと一息と、ソファに腰を下ろした俺に


「ソウくん。」


呼び掛けて来る声。不覚にも俺は一瞬固まってしまった。
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