そのままの君が好き〜その恋の行方〜
そして、私はまた近藤さんの家に来てしまっている。絵里ちゃんの相手をしながら、私は昨日のあれからのことを考えていた。


近藤さんとの電話を切った後、私は沖田くんに電話を掛けた。


電話から聞こえる沖田くんの声は、いつもの通り優しくて、私の胸は痛む。


「ごめんなさい。明日急遽、土曜出勤になっちゃって・・・。せっかく約束してたのに、本当にごめんなさい。」


携帯を持ったまま、深々と頭を下げる私。その私の言葉に、一瞬息を飲んだ沖田くんは、でもすぐに


『そっか、大変だなぁ。了解です、残念だけど、再延期だね。これでおあいこになっちゃったけど、3度目の正直に期待しよう。』


そう明るく言ってくれる沖田くんの声を聞いていたら、私は涙が滲んで来てしまった。


私は嘘をついてしまった。沖田くんの優しさにつけ込んで、先週の裏返しの理由なら、沖田くんが怒るはずがないと見越して、大切な約束を反故にした。


私の心に後悔が生まれていた。しかし、もうどうにもならなかった。


(ごめんなさい、沖田くん。近藤さんとの約束を果たしたら、必ずすぐに連絡します。私の方から、ちゃんと誘わせて下さい。)


私は、近藤さんの帰宅を待ちわびていた。


ところが、せいぜい2、3時間の約束が、夕方になっても近藤さんは帰って来ない。連絡を入れてみるが、携帯は留守電、メールにも返信がない。


さすがに、ちょっと途方に暮れかけていると、ようやく近藤さんからの着信が。


「もしもし。」


『すまん。すっかり遅くなってしまって。あと30分くらいで戻れる。もう少しだけ待っててくれ。』


「わかりました。絵里ちゃんも心配してます。早く帰って来てあげて下さい。」


『わかった。桜井さん、もう少しよろしく。』


パパが帰って来るとわかって、大喜びの絵里ちゃんの横で、私も正直、ホッとしていた。
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