一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 それから私たちは館内を存分に楽しんだ。晴正さんは海洋生物にも詳しいようで、沢山解説してくださって。時間を忘れて色んな話をしながら、手を繋いで歩く、それがとても幸せだった。

 イルカのショーを観た後、水族館の館内にあるカフェで一休みすることに。

 大きな水槽を眺めながら食事が出来る構造で、とても素敵。初めての水族館デートがこんなに楽しいなんて。今日でおしまいだったとしても、この思い出を胸に頑張って生きていけそうだ。

 それにしても。

「どうして今日、水族館に連れてきてくださったんですか?」

 思い切って聞いてみた。私を振るつもりなら、どこか適当な場所で良いはずなのに、こんな楽しい場所を選んだのは何故だろう。

「うーん、何処でも良かったんだけどね。暑いから美月を炎天下の中歩かせるのはナシだなと思って。ショッピングデートもこの間したし、屋内の定番デートスポットに来てみた。ちょっと安直すぎた?」

 なんだか照れた様子で、珍しく早口な晴正さん。

「いえ! 私、男の人とこうして出掛けたことがなくて。新鮮でした」
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