一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
「パーティ……ですか?」
「うん。パーティです」

 相変わらず仕事漬けの晴正さん。徹夜明けに帰宅した朝、胃に優しい朝食を完食してくれた後、言いにくそうに切り出された。

 何でも顧問弁護士を勤める『馬場コーポレーション』の馬場元治(ばばげんじ)社長には一人娘がいるそうで。
 その御令嬢からのアプローチが少々強引になってきたので、このパーティに私と参加して、キッパリお断りしたいのだそう。

「ご令嬢の相手を見繕いたいらしく、飲み会も何度か誘われたんだ。必ず娘さんが付いてきて本当やりにくくて」
「愛海さんから少し前に聞きました」
「そうそれ。飲み会の間、適当にあしらうくらいなら我慢するんだけど、婚約者がいるって伝えたのに電話してきたり、打ち合わせとして呼ばれたら食事だったりで、仕事の妨げになってきていて」

 ただでさえ、多忙な晴正さん。
 あぁ私がパラリーガルとしてきちんと見極めてスケジュールを組んでいれば。

「美月の存在も知ってるんだ。その上で俺の仕事用携帯に、私用の電話をかけてくる……」

 げんなりした表情で晴正さんが言った。そして私の手を優しく握りながら、にっこり笑う。

「だからとびきり可愛い美月を連れてパーティに行って、俺を候補から削除してもらおうと思って」
「わ、わわ、私なんかで務まるでしょうか」
「美月なら百人力だよ。可愛いから」

 甘い目線を送ってくる晴正さん。なんだか嬉しそう。

「婚約者だって、色んな人に紹介するよ。可愛い美月をみんなに見せびらかす。いい?」

 こくん。
 私は顔を赤くしながら、頷くことしか出来なかった。
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