一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

☆抱きしめられました

(眠れないです……!)

 手を繋いだまま添い寝をお願いされて数分が経過した。晴正さんは寝息をたてているので、恐らく眠ったようだ。

 私は普段からこの時間に起きるので二度寝なんて出来ず、さらには殿方と手を繋ぐのも初めてで、大変緊張している。眠れるわけがない。

 そっと抜け出して、やはり朝ご飯をご用意しておく方が良いのでは……。

 そう思って手を離そうと試みた途端、今度は力強く引っ張られ、あっという間に晴正さんの腕の中に包まれた。つまり、抱きまくら状態。

(ひゃ〜っ!)

 目の前に晴正さんの喉仏が望める。私の手は厚い胸板に着地し、私の背中には晴正さんの手が回されている。昨夜感じたそれよりも遥かに濃い、晴正さんの匂い。
 何がどうなったのか、乙女の憧れ、腕枕をしていただいていて、身動きできないまま心の中は大騒ぎだ。心臓がバクバクしている! 聴こえるんじゃないだろうか!?

 しかし、私は逃げ出したい気持ちをぐっと堪えた。恐らく一晩中お仕事をされていた先生には、休んでいただかなければ。

 私の頭を乗せている腕が、痺れて痛くならないか心配だが、ここで私が変に動いて起こしてはいけない。普段からお仕事ばかりで朝早くから夜遅くまで事務所に入り浸りの先生が、こうしてベッドでゆっくり眠るのはきっと貴重な時間だろう。

 携帯は自室に置いていて、乙女ゲームも出来ず、私はじっと時が過ぎるのを待つしかなかった。
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