一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

「美月ちゃんは? いないの? そういうひと」

 その質問で真っ先に頭に浮かぶのは、週末から私をキュンキュンさせて悩ませる乙女ゲーム。

「今困ったことになってるんです! 後輩の眼鏡君が素敵だと思って攻略していたら、まさかの同期から告白されまして! そして今ガンガン押されてるところでして! 私、押しに弱いのかもしれません……!」

 思い切って愛海さんに暴露したところ、なんだか目を白黒させている。

「……ん? ごめん、待って、それは……もしかして……」
「あっ、すみません! ゲームの話です!」
「……はぁぁ。ビックリしたー! 美月ちゃんのご両親に暗殺されるかと思った!」

 私の両親はとにかく過保護で、女子校に入れて男性との接触を避けさせていた上、現在においても愛海さんに監視をお願いしているようで……。心配しなくても私には何もないのに。

「現実世界ではご存知の通り、何もありませんし、特別な方もいません」
「まだ男の人苦手なの?」

 私は困り顔で頷く。女子校育ちで免疫がないせいか、男性と話すのが苦手だ。職場では顔に出ないよう努力しているが、知らない方と話すのはとても緊張してしまう。

「でも西園寺先生とは話せてるよね?」

「はい……。西園寺先生はそれどころじゃないというか……。ご多忙な先生のサポートに一生懸命で、苦手とか考える前に話しかけたり出来るみたいです」

「ふーん。まぁ、ゆっくり慣れていけばいいわよ! 西園寺先生でリハビリしてさ! ゲームみたいに押して押して押しまくってくれるステキな殿方に出会えたらいいわね!」

「ゲームで充分です!」

 それから仕事で困っていることはないか確認してくださると、美しい微笑みを残して愛海さんは仕事に戻っていった。
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