一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約
 愛海さんは最近、前にも増して綺麗になった。もともと美しい方だったが、輝きが増して、全身から幸せオーラが放たれている印象だ。

 自慢や惚気をする方ではないけれど、見ていてとても眩しい。そんな愛海さんを心の何処かで私も羨んでいるのだ、と自覚して、少し驚いた。

 私には現実世界で恋愛をすることは、とてもハードルが高い。憧れはあるけれど、男性と話すのはとても緊張するし、誰かと2人きりで出掛けたことさえないのだ。こんな面倒な処女を引き取って下さる殿方なんて、そうそういないだろう。

 ゲームの主人公はいつだって可愛くて綺麗で、色んな男性に好いてもらえる魅力的な女性。現実世界でいえば愛海さんみたいな人だ。私も、ゲームの中でならヒロインになれる。私はその夢の世界で恋愛を体験できればそれだけでいい。

(でも、もし叶うなら、一度でいいから、誰かを好きになってみたいなぁ)

 そんなことを考えながら仕事に励んでいたところへ、母から電話がかかってきたのだった。
< 9 / 142 >

この作品をシェア

pagetop