一途な敏腕弁護士と甘々な偽装婚約

★君との契約 晴正side

 待ちに待った、花火大会当日。

「やっと奥手王子もゴールインかー!」
「奥手ってなんだよ」
「王子は突っ込まないのね」

 ここは、奈良崎と愛海さんの新居。式目前だというのに、休日に招いてくれたのだ。
 美月は実家に用があるというので、今日は夜まで別行動。ただし、十九時からの花火大会は、自宅で一緒に観る約束をしてある。

 奈良崎はロースクール時代からの知り合いで腐れ縁。二人が付き合い始める前から、お互いの恋心を茶化しながら話し合ってきた。

 奈良崎の恋が先に実ってからは、この二人に散々からかわれるのがデフォルトになってしまっているが。

「……で? 婚約発表しちゃったけど、プロポーズしたの?」

 愛海さんが食後のコーヒーを出しながら聞いてきた。二人のお揃いのカップを羨ましく見つめながら、俺はうな垂れるように答えた。

「……まだ……」

「「やっぱり〜!」」

 くっ! この夫婦楽しんでる!
俺が苦悩する姿を見てニヤニヤしてる!

「美月は鈍感だからねー! 早いこと言葉にしないと一生気付かないと思うわよ」
「わかってます……でも、あの可愛い口で、『ごめんなさい』って言われたら……俺一生立ち直れない……!」

 すると奈良崎が追い打ちをかけてくる。

「このまま流されてもらって結婚に持ち込んだら、違う意味で結婚詐欺になるのかな……?」
「奈良崎っ! 怖いこといわないでぇぇ!」
「……何でもいいけど、ちゃんと言葉にしてあげて。あの子を、大切にして」

 愛海さんの真剣な目に、俺も真摯に答える。

「……もちろん。絶対大切にします」
「それ、本人に言えよなー」

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