legal office(法律事務所)に恋の罠
小池と付き合い始めた和奏は、大学では、教室にいるか、図書室にいるか、植物園にいるか、のいずれかだった。

美人な和奏とアイドル顔負けの小池は、姉弟のように仲のいいカップルとして同級生には認知されていた。

当時の和奏は、小池との週1デート以外は勉強ばかりしていたため、普段から眼鏡をかけていた。

髪の毛もひとつ結びにして色気もなく、他学年からの認知度はそこまで高くなかった。

そのため、この頃は宇津井と接触することはなかった。

2年生で司法試験予備試験を受けると決めてからは、図書館に籠ることが多くなった。

しかし、そんな和奏を優しく見守る小池も植物園での研究に熱中していて、二人の関係は穏やかで、かつお互いを尊重するいいバランスを保てていた。

だが、司法試験予備試験の合格が、和奏の注目度を勝手にあげてしまう・・・。

それは、同級生だけでなく、先輩や教員からも注目を浴びることになる。

そんな時だ。

宇津井が、図書館で勉強する和奏の前に現れたのは・・・。

いつものように、図書館で六法全書を開いていた和奏に、

「お前みたいな女は嫌いじゃない。俺が付き合ってやってもいいぞ」

と突然話しかけてきた宇津井。

和奏にとっては初めて会う男性。

同期でもないため顔すらも知らなかった。

「どなたか存じ上げませんが、間に合ってます。私には彼氏もいますから」

そうやって和奏が無下に断ったのが彼のプライドを傷つけ、何の落ち度もない小池を闇に葬りかけそうになったのだ。

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