legal office(法律事務所)に恋の罠
あれから何度もお互いを求めあった二人は、奏が和奏を包み込むような形で抱き合って横になっていた。

今は、甘い甘いピロートーク中。

「そういえば、奏さんと私の名前には、同じ"奏"と言う漢字がありますよね」

「そうだな・・・。知った瞬間、運命を感じたのは確かだ」

奏の大きな胸に、いつもとは真逆の嬉しそうな表情で抱かれる和奏は、

「奏さんの名前は、漢字通りの意味ですか?」

と尋ねた。

「奏という漢字には、"奏でる"という意味だけではなく、"走る"とか、"成し遂げる"って意味があるが、ホテルの跡継ぎの俺の場合は、後者の意味合いが強い様だ」

奏は、和奏の額に唇をあてると、チュッと音をたてて離れた。

「和奏は?」

「私の場合は、祖父が名前をつけてくれたんですが、"場を和ませるように"とか、"調和を保てる人になって欲しい"って意味らしいです。ちょっと弁護士向きではない、ですよね」

「へえ、名は体を表すって言うけど嘘じゃないな。和奏は周囲を気遣いすぎだから」

そう言った奏はなぜかニッと笑っている。

「じゃあ、俺たちの相性は抜群ってことで、早速、"奏"同士を"調和"させようか・・・」

「えっ?」

和奏が驚く間も持たせず、奏はもう第何ラウンド目か?に突入していく。

しかし、他愛もないそんな甘い一時が、和奏にとって、これから対峙する意地悪な企みと戦うために大切な充電時間となった。

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