legal office(法律事務所)に恋の罠
「ある一点とは?」

「・・・私にアプローチしてきたり、告白するような人が現れた場合、彼らは決まって会社をやめさせられそうになったり、事故に遭いそうになったりするんです。だから、宇津井に会わなくても、常に彼の気配を感じていました」

幼い頃からずっと、父親に手を回され、親しくなったベビーシッターや家庭教師を変えられてきた和奏にとって、それは悪夢の再来だった。

「だから君はわざと・・・男を近寄らせないために男嫌いを装って、無表情で強気なキャラまで演じてたのか?」

「表情が少ないのは昔からですが、別に特別、男性が嫌いなわけではありませんでした。失望はしてましたけど・・・」

俯く和奏は少し頬を赤く染めていた。

「それ以上に、もう私のために誰かが傷付けられたり、陥れられたりするのは見たくないんです。だから、私、奏さんのことも本当に心配で・・・」

「俺のことなら心配いらない。法律を操ることはできないげど、それをかい潜る方法は宇津井以上に持ってるつもりだ」

心配そうに見上げる和奏を、奏はじっと見つめる。

「山崎弁護士の言い分なら、君が誰かのものになっていれば宇津井はこれ以上手を出せないんじゃない?」

急に色気を漂わせて、顔を近づけてくる奏に和奏は胸が高鳴るのがわかった。

「俺は君が好きだよ。今日から俺と付き合ってくれないか?そうすれば俺は、君を全力で守れる」

男らしくて、頼りがいがあって、誠実で、しかもイケメンで・・・。

ここまで完璧ではなくても良かった。

いつか、和奏を見えない檻から連れ出してくれる存在を、

"恋も結婚もしない"

と、強がりながらも、心の底ではずっと待ち続けていたのだ。

「奏さんを好きになってもいいんですか・・・?」

「まだ、好きじゃないってこと?手強いね」

「いえ、好きに・・・なってます」

和奏が呟いた瞬間、

奏は、和奏の唇を塞いだ。

唇を絡めとるようなキスは次第に深く、深くなっていく。

奏の大きな手が、和奏の肩や腰、背中をすべる・・・。

「俺は小池のように、小心者でも、"待て"ができるお人好しでもない。目の前にチャンスがあれば全てものにするんだ」

奏は、和奏の腕をつかんで寝室のクイーンベッドまでつれていくと、ゆっくりと押し倒した。

「このまま、君の気が変わらないうちに、俺のものにしたい。そうすれば、君も遠慮なく俺に寄りかかることができるだろ?」

そう言って、和奏の首筋に唇を押し付けた奏は

「和奏を、君の全部を俺に預けて」

と、もう一度顔をあげて優しく微笑んで見せた。

「返品不可ですよ・・・?」

「じゃあ、遠慮なく」

「ああ・・・!」

奏の唇が手が、和奏を優しく翻弄していく。

ずっと、ずっと、

奏のような人が現れるのを待っていた。

奏は言葉と体を巧みに使って、和奏をどこまでも甘やかしてくれる。

お互いが交わるこの瞬間こそが、傷ついた和奏だけではなく、奏の心さえも満たしていった。

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