legal office(法律事務所)に恋の罠
約束の17時。
「お待たせしました。長谷川法律事務所、社長の長谷川行政(はせがわゆきまさ)と申します。こちらは、すでにご存知とは思いますが、当事務所の弁護士、宇津井です」
長谷川は、応接室に入るなり丁寧に頭を下げて挨拶をした。
Hotel Blooming東京側として奏と秘書の松尾の順に並び、その横に、山崎Legal officeの山崎庄太郎、和奏、湊介が並んだ。
向かい側には、長谷川弁護士と宇津井が並んで座る。
「早速ですが、今回の仲川将生さんの保釈金支払いについて、宇津井弁護士から仲川社長への助言があったというのは本当ですか?そして、私の住所を教えたというのも宇津井さんと伺っておりますが?」
いつものように
"会話は録音します"
と初めに告げた和奏は、単刀直入に宇津井に尋ねた。
「私がそんなことを言うはずはありませんよ。親バカな仲川社長が独断でやったことでしょう。ご迷惑をおかけしました」
他人がやった(こととする)内容には簡単に頭を下げる宇津井を、和奏はじっと見つめ返した。
「おかしいですね。では、仲川将生さんが嘘をついていると?」
「ええ、保釈金請求は一親等の親族なら弁護士を通さなくてもできますからね」
あくまでもシラをきり通そうとする宇津井に
「刑事訴訟法第96条の五、被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたときには保釈の取り消しを求めることができる、
ことはご存知ですよね?
将生さんは、私を莉音さんの代わりに金づるにしようと考えていたと述べ、マンションで待ち伏せをし、更に今後の対応についても脅しとも取れる言葉を残して去っていきました。
証人はここにいらっしゃる被害者の兄の桜坂さんです。
こちら側としては、裁判所に将生さんの再勾留を求めるつもりですが、宇津井弁護士としては異存はないですか」
と尋ねた。
「構いませんよ。まあ、今ネットを騒がせている桜坂社長の証言では、信憑性がないと取られかねませんがね」
宇津井は馬鹿にしたように呟いた。
山崎はニヤリと笑って和奏を見て、目配せをする。
「おや、場合によっては、宇津井弁護士の今の言動は名誉毀損に当たるかもしれませんよ」
「あれだけ動かぬ証拠があるのにですか?揉み消そうにもことが大きくなりすぎたでしょうに」
「よさないか。宇津井くん」
長谷川弁護士の制止に耳も貸さず、宇津井は勝ち誇った顔で続ける。
「将生くんよりも、女にだらしない方がここのトップでいらっしゃるようですし、こんな小さな案件に構っていないで、もっと対策を考えるべきことがあるのではないですか?なんなら、私が相談にのりますよ」
と横柄に笑った。
「ええ、是非ともあなたからお話を伺いたい」
それまで黙って成り行きを見つめていた奏が、初めて口を開いた。
「お待たせしました。長谷川法律事務所、社長の長谷川行政(はせがわゆきまさ)と申します。こちらは、すでにご存知とは思いますが、当事務所の弁護士、宇津井です」
長谷川は、応接室に入るなり丁寧に頭を下げて挨拶をした。
Hotel Blooming東京側として奏と秘書の松尾の順に並び、その横に、山崎Legal officeの山崎庄太郎、和奏、湊介が並んだ。
向かい側には、長谷川弁護士と宇津井が並んで座る。
「早速ですが、今回の仲川将生さんの保釈金支払いについて、宇津井弁護士から仲川社長への助言があったというのは本当ですか?そして、私の住所を教えたというのも宇津井さんと伺っておりますが?」
いつものように
"会話は録音します"
と初めに告げた和奏は、単刀直入に宇津井に尋ねた。
「私がそんなことを言うはずはありませんよ。親バカな仲川社長が独断でやったことでしょう。ご迷惑をおかけしました」
他人がやった(こととする)内容には簡単に頭を下げる宇津井を、和奏はじっと見つめ返した。
「おかしいですね。では、仲川将生さんが嘘をついていると?」
「ええ、保釈金請求は一親等の親族なら弁護士を通さなくてもできますからね」
あくまでもシラをきり通そうとする宇津井に
「刑事訴訟法第96条の五、被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたときには保釈の取り消しを求めることができる、
ことはご存知ですよね?
将生さんは、私を莉音さんの代わりに金づるにしようと考えていたと述べ、マンションで待ち伏せをし、更に今後の対応についても脅しとも取れる言葉を残して去っていきました。
証人はここにいらっしゃる被害者の兄の桜坂さんです。
こちら側としては、裁判所に将生さんの再勾留を求めるつもりですが、宇津井弁護士としては異存はないですか」
と尋ねた。
「構いませんよ。まあ、今ネットを騒がせている桜坂社長の証言では、信憑性がないと取られかねませんがね」
宇津井は馬鹿にしたように呟いた。
山崎はニヤリと笑って和奏を見て、目配せをする。
「おや、場合によっては、宇津井弁護士の今の言動は名誉毀損に当たるかもしれませんよ」
「あれだけ動かぬ証拠があるのにですか?揉み消そうにもことが大きくなりすぎたでしょうに」
「よさないか。宇津井くん」
長谷川弁護士の制止に耳も貸さず、宇津井は勝ち誇った顔で続ける。
「将生くんよりも、女にだらしない方がここのトップでいらっしゃるようですし、こんな小さな案件に構っていないで、もっと対策を考えるべきことがあるのではないですか?なんなら、私が相談にのりますよ」
と横柄に笑った。
「ええ、是非ともあなたからお話を伺いたい」
それまで黙って成り行きを見つめていた奏が、初めて口を開いた。