legal office(法律事務所)に恋の罠
「和奏、奏さんとはどうなった?」

「今はそれどころじゃないでしょう?全く・・・湊介のマイペースぶりには毎度呆れるわ」

インターネットやSNSの書き込みの更新履歴をみながら、和奏は湊介の方に顔も向けずに言った。

「大丈夫だって!親父も俺も小池さんのことがあってから、ただ傍観してた訳じゃないって言ったろ?ここからは、親父と奏さんにまかせとけばいい。・・・で、2人は付き合うことになったの?」

どうにかして、奏と和奏の関係に何かがあったと言わせたい様子の湊介に、

「全部終わったら話すから」

と、和奏は苦笑して返した。

「お、何もないって言い返さないところをみると、何かあったんだな?おお、ようやく和奏にも春が来たか!」

「何で湊介が浮かれてるのよ。そんなんじゃ、宇津井に足元すくわれるわよ」

「あんな自己中にやられてたまるかよ。仲川将生の件といい、余計なことばっかりしやがって・・・」

悔しそうな湊介だが、その怒りには別の感情も見え隠れしているようだ。

「湊介こそ、莉音さんと進展があったの?」

ゴホゴホっと、飲みかけのコーヒーを吐き出した湊介の顔は真っ赤になっていた。

「莉音ちゃんとは、そんなんじゃない」

「じゃあ、どういうのなの?」

からかう和奏の顔には笑顔が浮かんでいた。



社長室と執務室をしきるパーティションは、今はスモークガラスから透明ガラスに戻り、社長室の奏からも執務室の様子はよく見えていた。

和奏が山崎親子に見せる姿は、自然な姿だ。

"今日、宇津井の件が全て解決すれば、あの姿も全部俺のものになる"

パーティション越しに和奏を見つめる奏の目は、宇津井に対するものとは別の意味で、狩人の目をしていた。

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