海賊船 ~天下は誰の手に~
半兵衛は心臓病を患っていた。今の技術では直せない病気だった。

半兵衛はきっとその事を知っていたのだろう。心臓病のことを誰にも言わず、ずっと孤独に戦い続けてきた。ただ、官兵衛だけは半兵衛の心臓病のことを知っていた。だが、半兵衛が言うのを止めていたのだろう。

半兵衛と官兵衛は戦場ではずっと2人だった。きっと半兵衛がいつ倒れてもいいように官兵衛が見守っていたのだろう。

それを知った時、胸が痛かった。半兵衛の変化に気づいてやれなかった自分の不甲斐なさに。孤独に戦い続けてきた、半兵衛の辛さに。そして、あの時の官兵衛の気持ちに。


いつもの様に戦場を駆け抜け、競い合っていた2人。しかし、半兵衛の様態が急変した。ついに半兵衛の中の心臓病が牙を向き始めたのだ。半兵衛は心臓を抑え、荒い息を繰り返していた。

そして、倒れてしまった。たまたま違う陣にいた官兵衛は気づかず、俺のみがその陣にいた。だが、俺は自分のことに集中しすぎていた。

半兵衛が倒れたのに、気づけていなかった。

敵は倒れた半兵衛の首を狙い刀を振り下ろす。動けない半兵衛が避けることは出来るはずもなく、半兵衛は命を落とした。

気づいた時にはもう遅かった。

それから陸に戻り、御殿に戻った。半兵衛の死を知った官兵衛は俺を責めた。なぜ自分をあの場に置いてくれなかったのか。なぜ半兵衛が倒れてるのに助けなかったのか。当たり前だろう。俺がもっと半兵衛に気を向けていれば半兵衛は命を落とすことは無かっただろう。

あのとこのことを思い出すと、俺は今でも自分を責めたくなる。自分が不甲斐ないばかりに、半兵衛は命を失う羽目になってしまったのだから。

正直切腹しようとも思った。でもそれは違う気がした。俺は半兵衛の分まで生きねばならない。


「世話をするあなたは楽しそうでしたよ?w」

「そうか?まああの時は自分を世話してるような気持ちだったからな。」


「あの日からでしたね。あなたの迷子率が減ったのは。」

「そうだな……俺はあいつの分まで生きねばならぬと思ったら迷子なんかなってる場合じゃないとも思ってな。」

「そうですか。で、あなたはなんで抜け出したのですか?家を抜け出せば私たちの敵になることなど分かっていのでしょう?」
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