レンダー・ユアセルフ

/王女への報復




馬車が走り去り闇夜に紛れて直ぐ後の事。

シャムス王宮向かいの路地の影――一見して誰も居ないと思われた場所に身を隠していた男は、徐に公衆電話ボックスに滑り込み慣れた動作でダイヤルを回す。





そして機械的な呼び出し音が途切れたと同時に電話口から響いたのは、既に大国へと向かった彼女らからすれば思い掛けない人物の声だった。



"――もしもし"

「主上。至急連絡申し上げます」

"動いたか?"

「はい。あの方角からすればユースヒトリかと」

"成る程…ならば日没には着くな。ご苦労であった"







「はっ」



切断された受話器の向こう側で、ニヒルな笑みで口許を飾る男性。

わざわざ異国にまで家臣を向かわせた「主上」たる人物の正体とは?思惑とは――?


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