レンダー・ユアセルフ



         ◇





王女姉妹がそろそろユースヒトリに着くであろう時刻のこと。
太陽が水平線に沈み始め、チューリア国内の家々は橙に染められつつあった。

そんな時に国王夫妻の元へと届けられたのは、リリアがシャムス出立前に両親宛に記し投函しておいた一通の手紙である。





緊迫した表情で文面を見詰めていた二人だったが、最後まで読み終えるなりほっと胸を撫で下ろす。

女中姿に扮していたリリアは、実は昨晩アリアナとミーアが話していた内容を身を潜めて聞いていた。

だからこそ彼女の本心を知り得る事が出来たのだ。アリアナが誘拐されたのではなく、自らの意思でシャムスに渡り――シャムス国王夫妻にも上手い具合に正体を隠して接していたことも。

噂好きの女中達から「ジョシュア王子の意中の女性」についての情報は驚くほどすんなりと耳にすることが出来た。






「どうやらシャムスとの戦火は免れたようだ」






心から安堵した表情でそう口にした国王に王妃は深く頷いて同意する。




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