レンダー・ユアセルフ



「未亡人という体《てい》でなら、あの子だと露見しませんものね」



手紙には続きがあった。シャムスとの争いの種は消え、アリアナはジョシュアを男性として好いていた訳では無かったこと。

その裏に後続されていたのは、アリアナがジーファへの気持ちに気付いたことだった。






もしも知らぬ内にこのように家族に筒抜けになっていると分かれば、アリアナのことだ。気恥ずかしさと居たたまれなさで又もや家を飛び出してしまうかもしれない。

しかしながら、こうして唯《ただ》只管《ひたすら》心配や不安に苛まれていた両親なのだから知り得る権利も有るというもの。






「ジーファ王子と、気持ちが通じると良いですね」

「うむ」






読み終えた手紙から視線を上げ、窓枠から更に遠くのユースヒトリへと思いを馳せる。

どうか、娘たちが無事にこの国へ戻って来ますように――夫妻は黄昏時へと移り行く空を見詰め、唯々切々と願うのだった。



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