月夜の砂漠に一つ星煌めく
「ハーキム。構え!」

容赦ない先生に、ハーキムは剣を、構えようとはしなかった。

「ハーキム!」

先生に大きな声を出されたハーキムは、わざとゆっくり剣を構えて、時間を稼ごうとしている。

「早くしろ、ハーキム!」

先生は益々、激しく叱責する。

「ハーキム。私は大丈夫だ。」

先生に聞こえるか、聞こえないかの声で、ハーキムに伝えた。

「はい……」

ようやく剣を構えたハーキムは、全く疲れた様子がなかった。

さすが日頃から、体を鍛えているだけある。


「始め!」

先生の掛け声と共に、一歩踏み出す。

「ハッ!」

「ハッ!ハーッ!」

少し加減してくれているのか、ハーキムは俺が踏み込まないと、攻撃はしてこなかった。

「ハーキム!本気を出せ!」

それは、先生にもお見通しだった。

何度も怒号を浴びせられても、自分から踏み出してこないハーキムを見て、先生は遂に剣を持ち上げた。
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