大嫌いなクール王子になぜか溺愛されてます。
思い出したくもないあの頃。
もう一年経ったというのに、未だにふとしたときにわたしの心をえぐるように支配してくる。
あんな辛い過去、すべて消えてしまえばいいのに──。
心を落ち着かせるように小さく深呼吸をする。
大丈夫、大丈夫。
教室ではあるけれど、ここはあの場所じゃない。
わたしにひどいことをするやつらは、だれもいない──。
「二年一組の担任をつとめる田中だ、よろしく」
いつのまにかこの二年次の担任を務める男性教諭が日誌片手に教壇に立っていた。
顔を上げると同時に、わたしの隣が空席であることに気がついた。
右隣は窓のため、左隣のことである。
新学期早々病気かサボりか冠婚葬祭か。おそらくいずれかに当てはまるだろう。
だが、その人物はどれにも該当しなかったのだ──。
「さて、ホームルームをはじめる……前に、この高校に新しく入る転校生を紹介する。じゃあ、入ってきてもらおうか」
先生はにこやかに笑って廊下で待っているのであろう人物を教室のなかへの招いた。