【完】さつきあめ〜2nd〜

「待つのと待たせるの、どっちが辛いのかな?」

「え?」

「もう何度も夕陽には言ってきたけど、俺はずっと待たせすぎた。…お前を守るためなんて、かっこいい事言えねぇけど、俺はそうやって自分に言い訳して色々な事から逃げ続けてきたんだ。
でも俺の中のお前はさ、出会った頃よりずっと大きくなっていった。
きっと昨日より、今日。今日よりも明日はずっと夕陽が好きになってる。俺はもうお前の諦め方なんてわかんねぇんだよ」

「光……」

待つのと待たせるの、どっちが辛かったんだろう。
光をずっと追いかけて、光の全てが欲しくてもがいていたあの日々。ずっと光を待っているのが辛かった。
けれど、今にして思えば、待たせる方だって辛いし、痛い。
保証のない未来を全て捧げられるほど、誰だって強くないし、清くも生きられない。
皆が同時に同じくらいの幸福を手に入れられないなんて、もう分かってた。それなのにこの期に及んで光を傷つけたくないなんて、わたしはやっぱりとんだ偽善者だ。

光はもう一度空を高く睨みつけて、その視線をわたしへ移した後、出会った頃のような優しい微笑みを落とした。

「それでも、俺は待つよ」

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