【完】さつきあめ〜2nd〜

「………っ……」

さっきよりずっと雨が小降りになったのがわかる。
この部屋で、ふたりきり、聴こえるのは小さく地面を打つ雨音と、朝日の呼吸とうなり声だけ。
さっきからずっと。

わたしはまるで自分の体なのに、自分の体ではないような感覚で、ベッドの端っこでぼんやりと背中を丸めうなり声をあげる朝日をずっと見つめていた。

真っ白なシーツの中央に、生々しい血の跡が残されていた。

朝日はわたしを抱いた。
それはドラマとかで見る初めてのどこまでも優しい’初めて’とは大きく違っていて
朝日はまるでわたしを物でも扱うように、わたしの言葉も、抵抗もすべて無視して無理やり乱暴に抱いた。
ただただ怖くて、痛みと悲しさの中で何度も泣き叫んだ。それでもその時の朝日はまるで違った人のようにわたしの全てを奪っていった。

どのくらい時間が流れていたのだろう。

行為を済ませた後、朝日は白いシーツにこびりついた血痕を見て、驚いたような表情を見せて、わたしの肩を強く揺さぶった。

「お前…まさか…」

朝日の声がずっと遠くで聞こえているような感覚だった。
まるでその場にいないような感じ。
わたしはわたしを失ってしまって、上から朝日と自分を見ているような感覚。
朝日の問いかけに応えることもなく、ぼんやりと天井ばかり見ていた。

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