【完】さつきあめ〜2nd〜

「何だよ、ゆりか」

「…おつかれさまです」

平然としてるけど、元カノと今カノがここにいるって事、この人はちゃんと理解しているのだろうか。
けれどゆりも、朝日も、そんなのお構いなしと言った感じで自然だ。
不自然だったのは、わたしと、ゆりを取り囲む人々の方だったろうか。

ゆりの後ろで、ひそひそと声を潜める3人組。
いかにもキャバ嬢って感じのいで立ちのその人たちは、どこかで見た事がある。
同じグループ内なんだから、SNS関係の更新を見たりもするし、雑誌にだって載っていた。
ONEのキャスト。おそらくゆりを取り巻くキャバ嬢たちだった。わたしを見る目が蔑むような眼で、一瞬で好かれてないのは分かったけれど
あからさまに声を潜められて、集団の威圧にその場にいるのが嫌になるくらい。

ゆりが華やかすぎるのだ。
連れの3人のキャバ嬢だってあくまでもONEのキャストで、それなりに美しく、着飾った女性だった。
けれど、やっぱりこうやって並ぶと分かる。ゆりは違いすぎる。別格すぎる。
戦う気も失せて、この人の下についた方が得だって、思わざる得ない。そんな独特のオーラがあったし、美しいだけじゃない彼女はいつだって自信に満ち溢れていた。

ゆりは直ぐにわたしたちから少し離れたテーブルに座る。
さっきまでひそひそ声で話していたゆりの連れの3人は朝日に馴れ馴れしく話を掛けてきた。

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