【完】さつきあめ〜2nd〜

「朝日、わたし豚串おかわり」

「またかよ?!ここ一応焼き鳥屋だぞ?」

「いーじゃん。豚さんのが好きなの。油乗ってて~
後鳥皮~」

「お前なぁ、そんな風に食ってるとあっという間にブーってなるぞ。
ブーって。
俺は太ってる女は嫌いだ!」

「いや、きっと朝日はあたしが後20キロ太ってもあたしを好きなまんまだよ」

「お前……どこからそんな自信が出てくるんだか…
マスター!鳥皮と豚串追加ね!!!」

こんな冗談を言いながら会話をしていると、つくづく平和だなぁと思う。
けれどここもまた狭い街。どこへ行っても知り合いに会ってしまうのは、時としてうんざりしてしまう。
結局は大都会の中の、小さな街の一角なのだと、思う。

「らっしゃーい!!!」

マスターの威勢のいい掛け声と共に、古びたドアが開く。
どう見ても場違いの団体。
わたしたちだってはたから見れば、そうだったかもしれないけど。
いくら狭い街だからって、絶対に朝日と一緒にいる時に会いたくない人は数人くらいいるものだ。

「あら、朝日じゃない。
さくらちゃんも」

こう言っちゃ失礼だけど、その煌びやかすぎる集団と、この薄汚い店が全然マッチしてない。
もっともっと、この人には高級なお店が合ってると思うんだ。そんな彼女が自らこのお店に来るって事は、朝日が連れてきた事があるのだと思う。
それを想像しただけで少しだけへこむ。

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