【完】さつきあめ〜2nd〜

わたしに出来る事なんて……。そう考えだしたら、涙が溢れてしまいそうだった。
まるでその気持ちを見透かしたように、高橋は両手でわたしの頬を叩いた。

「俺の前で泣くな…!!何度言わせるんだ!」

「な、泣かないよ!!」

「さくら……」

「え?」

「深海さんの夢はさ
シーズンズに居て、昔の仲間と一緒に笑いあえた場所をもう一度作る事なんだって」

昔の仲間。
深海の言いたい事はさくらさんがいて、朝日や光と笑いあえていたあの日々を取り戻す事だとすぐに分かった。
いつか言っていた事があった、あの日々の事。

「俺もかも

俺は七色グループなんて本当はどうでもいいっちゃいいのかもしれない。
でも楽しかったよな?シーズンズで皆で笑っていた頃。
だから俺は七色を守りたいというよりかは、シーズンズを守りたいのかもしれない」

「あたしも………
美優ちゃんや綾乃ちゃんやはるなちゃんがいて
深海さんと高橋くんと光と笑いあえてたあの頃が1番楽しかった…。
朝日と一緒にいられなくても、戻りたい時間があるかって聞かれればあの頃かもしれない…」

全ての始まりだったあのお店。
どうして優しい思い出ばかり蘇ってくるのだろう。


誰の手にも、守りたい物があった。
勿論、こんなわたしの中にだって
ゆらゆらしていて、ふらふらとしてばかりいて、それでも立ち上がらないといけない現実の中で
まだわたしに出来る事がある?あなたにしてあげられる事がある?
もしそれがあるのならば、わたしはあの人ともう一度向き合わなくてはいけないのかもしれない。
こいつは弱い女じゃない。高橋があの日言った言葉。あなたも大切な人。
大切な出会いはやはりあの場所にばかりあった気がする。

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