【完】さつきあめ〜2nd〜

「さくらは…いいんだ…」

「いいんだじゃねぇっつーんだ!
なんでもするって言ったろ!じゃあ何でもしてみせろよ!
自分の弟も守って、自分の女も守りたい?!お店も全部守れたらそれはそれでいいかもしれないけど
人ひとりの手で守り切れる物なんて限られてるんだ!
いまのあなたじゃ、何ひとつ守れない!」

朝日の右手が、今度は高橋の頬に命中した。
けれどわざと当たられに行ったようにも見えた。
高橋は床に叩きつけられるように転がって行った。

「クソガキが、生意気言ってるんじゃねぇよ…。
俺はこれから用事がある。さくらの事送って行けよ」

朝日はこちらを見ずに、店から出て行った。

「高橋くん!!だいじょうぶ?!」

頬からは、血が少しだけ流れていた。それを拭いながら高橋はゆっくりと立ち上がった。

「いってぇなぁー…。
だいじょうぶだよ。どーせ殴られるって分かって唇噛みしめてただけだから…」

「わざと殴られに行ったくせに…」

「うるせぇんだよ。お前も宮沢さんもバカみたいだ」

「…初めて高橋くんの事かっこいいと思ったかも…」


「バッカじゃねぇの?
お前は傷ついたり嫌な事があるとすぐ酒に逃げる癖もうやめろよ」

「そんなの分かってるよ……。
でも高橋くんがああ言ってくれたり、本当に七色の事考えてくれてるの嬉しかった…
朝日だってああは言ってたって絶対に嬉しかったはずなんだよ…。
でも…朝日の言う通り…あたしに出来る事なんて………」

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